データサイエンティストの書評ブログ

データサイエンティスト2年目のクールベがお送りする書評ブログです。ビジネス書、歴史小説、紀行文など様々な本を紹介します。

【感想】世界のエリートが実践している絵画鑑賞法とは

こんにちは、データサイエンティストのクールベです。

早速ですが、次の作品の作者と作品名を伏せた状態で、あなたはアート作品から何を読み取るでしょうか?

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図1

という冒頭から始まる、なぜ、世界のエリートはどんなに忙しくても美術館に行くのかについて、レビューしたいと思います。

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はじめに 

美術と仕事って関係あるの?って思われる方が大半かもしれません。しかし、実は世界のエリートたちは人生や仕事で役立つ能力を伸ばすために美術鑑賞を行っている、と本書は説いています。

そう聞くと、難しいのかと身構えてしまうかもしれませんが、本書で紹介されている美術鑑賞法は専門知識を必ずしも必要としていません。

それにもかかわらずこの美術鑑賞法は米国の「MOMO」と呼ばれるニューヨーク近代美術館で考案されたメソッドである、VTC(Visual Thinking Method)を元にしていて、本格的な方法です。

VTCの概要

VTCが大切にしていることは 「誰によって制作されたのか?」 「いつ制作されたのか?」 「何のために制作されたのか?」 という「作品の背景」を問わずに、作品そのものへの理解だけではなく、作品をみて自分が何を感じ、何を考えるのか、ということです。

たしかに個人の価値観が重要視される現代ではアート作品に対して、作品の背景を十全に知っているよりも、そこから自分は何を感じるのかというようなことが大切かもしれませんね。なぜなら、作品の背景は、ググればわかるからです。

VTSを実践することによって、観察力、批判的思考力、言語能力が養われることが実証されているそうです。

VTCの具体的方法

それでは、VTCはどのような方法で行えばいいのでしょうか。とても、簡単です。 おおまかには次の2つのことを行えばいいそうです。

  1. 絵から分かる事実を列挙する。
  2. 事実を組み合わせて、自分なりの解釈を導く。

とても簡単ですね。具体例として、冒頭の絵を使って考えてみましょう (最近、美術展も行われていたので、見に行かれた方もいるかもしれませんね。自分も見に行きました笑) まずは、1つ目の事実の列挙です。

  • 女性が着ている服には、卵型のような模様が見える
  • 2人がいる場所には花が咲いている
  • 女性のつま先が崖っぷちで踏ん張っているように見える
  • 女性の左手が、男性の右手をしっかりとつかんでいるように見える
  • 全体的に暗い雰囲気だが、星のような明るい点がたくさん見える。

などパッと見ただけでも様々なものが分かるかと思います。 次に、これらを組み合わせて、

  • 女性の服装と植物から、「受粉」や「雄しべと雌しべ」を思わせ、「性行為」のイメージがわく
  • 「性行為」と二人の立ち位置から男性の「種子」を女性ががっちりと受け止めている
  • 暗い雰囲気と星のような明るい点から、不安を抱えながらも光り輝く未来への期待がみえる

と想像してみることが可能です。これはあくまでも1つの例なので、もちろん他にも多くの「鑑賞結果」が得られること思います。 そして、名画こそ、多種多様な解釈の可能性があるのだと、作者は書いています。

最後に

この冒頭の作品は、グスタフ・クリムトも「接吻」という作品でしたがどうだったでしょうか。 私は、この本をよんで、作品名も、作者も、背景知識のないまま、アートを味わうことを体験して かなり楽しむことができました。美術館に行きたくなりますね!

さらにビジネススキルとして考えてみると、絵画を見て単純な事実を列挙して、そこから様々な妄想をしてみること、考え抜いてみること、 それを他者に伝えること、、、などとやってみると色々な能力が鍛えられるかもしれません。

今週末は美術館へ!